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モッシュッシュピットB

メイトさんに聞いてみた

メタルエリート理論


かつてアメリカの片田舎に1年間住んでました。
高校生の留学ホームステイというありきたりな理由。
住んでいたのは人口3千人ちょっというちっちゃな町のそのまた郊外。
隣の家にいくのに数十メートルなんていうね。
そんな田舎でも通っていた高校の生徒は800人ぐらいはいた。
校区がとても広くみんな車やバスで通ってくる。
生徒は白人ばかり。
有色人種は数えるほどで、いてもベトナム系かフィリピン系。だいたいはお母さんがそっち系っていうだけで、家族そのもののアイデンティティが有色人種という家はなかった。
アメリカの人口の数割を占めるというヒスパニック系なんてどこ? 黒人ってのはテレビの世界の人たちだよね。の世界。
あるとき、町の白人女性が隣の隣の町(人口数万人の比較的大きな町)に住んでる黒人の人を彼氏だと言って連れてきたらすぐに噂になってた。
アメリカの田舎なんてそんな世界。


で、田舎の高校生たち。
よく知られているようにアメリカの高校にはヒエラルキーが存在する。
向こうはとにかく何にでも優劣をつけるので、できる者は誉められ有名になれる。
人口3千人の小さな町にでも地元の新聞、地元のラジオがある。
当然地元の多くの人たちが地元の新聞をとり地元のラジオを聞く。
高校の動向はそんなメディアにとって格好のニュース提供元だ。
高校のスポーツクラブの成績、ブラスバンド部の活躍、チアリーディング部の活躍、コーラス部の活躍、中には数学クラブやアカデミック(勉強)クラブなんてのもあってそこにも大会がある。
そこで活躍、というか、1勝でもしようもののなら地元の大きなニュースだ。みんな名前入りで報道される。
だからスポーツが得意だったり、歌うのが得意だったり、頭がよかったり、一芸に秀でたものはすぐにヒーローになれる。

ヒエラルキーの最上段はスポーツ選手たち。
こんな田舎、なにも娯楽がない。映画館なんてまちにちっちゃいのが1つだけ。そこにいったら知り合いばかり。
あとは何にもない。ほんとになんにもない。
ということで、毎週金曜日に行われるアメフト、バスケの試合は町の多くの人が観戦に訪れる。
アメリカの高校の学校設備はすごい。
屋内で行われるバスケはもとより屋外でのアメフトの試合もナイトゲーム。どの学校にも照明設備があり、毎週金曜日に試合が開催される。
9~12月がアメフトのシーズン、12~4月がバスケ。
毎週金曜は試合だ。
シーズン制なので、アメフト・バスケを掛け持ちする選手もいる。
そんなスター選手たちがヒエラルキーのトップ。
女性陣のトップはそんな選手たちとつるんでいる軍団か、
チアリーディング部やバトン部のトップ選手たちだ。
とくにバトン部は重要で、バトン部のエースはそのまちの華。クイーンである。

ヒエラルキーの2番手はブラバン部とかコーラス部とかいったあたりですかね。
各自がスターではなくてもやっぱり何かに属しているというのは強いんですね。
彼らは彼らの繋がりや絆があり、学校でも存在感を示しています。

で、あとはよくわかりませんが、なめられない層としては
ケンカが強そうなグループ(不良グループ)とキレイ系のグループですな。
一匹狼じゃダメなんですな。グループに属していないと。

で、次ぐらいにくるのが頭のよい人たちですかね。
秀才軍団は一歩間違えばオタク扱いされるので案外低かったです。

そしてその他の普通の人たちがきて

最下層にいるのが、オタク と メタル・・・

 

まずオタクですが、
いや、オタクってのはnerdとかgeekって呼ばれるわけですが、このレッテルを貼られるのをみんな嫌ってましたね。
カーストの上のやつらは何かにつけてすぐ言うわけですよ。「あいつはnerdだ。付き合ってもろくなことないぜ」みたいな感じで。
でも、留学したはじめの頃、自分によくしてくれたのはこのオタクと呼ばれる人たちだったので僕は彼らに色々教えてもらってすごく仲良くさせてもらいました。

 

で、問題のメタラーたちです。
見た目ですぐにわかります。
だいたいロンゲです。前・横は短くても後ろ髪はたいてい伸ばしてます。
で、ほとんと毎日黒いTシャツを着てきます。
歩き方はヒョコヒョコ歩きのやつが多く、
たまにわざとらしくマリファナを吸いながら学校に来るやつもいました。
「ウェインズ・ワールド」って映画が昔ありましたが、あの映画はこういう人たちの特徴をうまく捉えた映画で。

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帽子をかぶってるほうのキャラはヒョコヒョコ歩きますよね。ほんとにあんな感じでヒョコヒョコ歩くんですw
ただ、「ウェインズ・ワールド」のほうはシカゴの郊外ってことで、彼らはダサいですけどそれでもなおシティ化されてて、メタラーっていうよりロック好きって感じですかね。ど田舎メタラーに比べたらはるかにマイルドです。実際、自分の高校のメタラーたちはあんなにニヤニヤしてないし面白くもなんともなかったです。。。

で、たいてい成績が良くなくて。
アメリカの高校の授業は日本の大学のように選択制な上、国語1、国語2みたいに難易度別に分かれていて。
メタラーたちはたいてい下のクラスに入ってるんですね。

彼らは実は最大勢力じゃないか?ってぐらい人数がいるのですが、面白いのはこのメタラーたちは別につるむわけでもないんですね。
彼らの中に分け入ったわけではないので詳しいことはわからないんですが
とにかく学校で徒党を組んだりはしていない。
だいたいは一匹狼なんですな。
そしてみんな無口です。

そこが見た目は同じようでも不良グループと違うところ。
不良グループはけっこう社交性があって、うるさいです。
徒党を組んで女子やオタクたちにちょっかいをだしたりしますがメタラーたちはそんなことしません。基本暗いんですな。

 

ヒエラルキーが如実に表れるのは、毎週末どこかの誰かの家で行われているパーティで。パーティと言っても田舎なんでただひたすら缶ビール飲んでるくそ面白くないやつですが、
ここに現れるかどうか(声がかかるかどうか)ですね。
今週末どこでパーティが行われるかはみんな知っているんですよね。ここが味噌なんです。
自分も週末にはパーティが行われていることは知っていたけど、ず~っと声がかからず、どんなところか行ってみたいしすごく寂しい思いをしましたね。
1年近くいてようやく最後のほうに行くことが出来たんですがびっくりしましたよね。何人いるの?ってぐらい人が集まってます。
で、みんな好き勝手に飲んだりしてるだけなんでコミュ力がないと面白くもなんともありません。
でも1度参加するとやっぱり違うもんで突然第1グループからのお誘いが多くなりました。
コミュニティに認められたということなんですねぇ。

そしてこういう場所に顔を出さない(呼ばれない)のが悲しいかなオタクとメタラー

 

んで、なんでそんなメタラーと接点があったかっていうと
僕はHRが好きだったので(ボンジョビ、ガンズ、モトリークルー、スキッドローあたり)、なんの拍子か知り合ったHR好きに頼んだんですよね。
アメリカにいる間にロックのコンサートに行ってみたいと。
くそ田舎なんで車がないことにはどうにもならないわけです。
そしたら、車で3時間ほど走らせた町にポイズンが来るってことで連れてってくれたんですね。
乗せてもらった車にはすでに4人乗ってて。運転手はすでに高校は卒業した大人の人で
他に乗ってたのはその相棒1人と見たこともないケバケバの女性2人でした。
こんな派手なお姉ちゃん、この町にいたのかな?って感じです。
ちょっとおっかなかったので詳しくは聞けずでしたが、どうも高校をドロップアウトしてしまった女性たちのようでした。
んで、この女性たちも運転手と親しく話すわけでなし、僕の相方も親しく話すわけでない。
2人連れが3組それぞれしゃべってるって感じでした。
思ったのは、HR好きにはHR好きのコミュニティがあって、ゆるく付き合っていて、ライブがあるときは車を融通しあうというような印象を持ちました。

で、ポイズンのライブはアリーナクラスで行われたのですが、音響が悪く、ってか、CDに比べて下手っぴ過ぎてとても聞けたものでなくてガッカリでしたが
アメリカで初めてのライブということと、とにかくですね、来ているお姉ちゃんたちがみんな派手なんですわ! セクシーすぎてもう。
それ見てるだけで満足でしたね。やっぱお姉ちゃん見るならメタルよりハードロックですな。それもポイズンみたいにルックスのよいグループということでなおさら。

 

で、この田舎町、いちどポイズンのコンサートに行ったってだけで噂が広まったのか、ついにメタラーから声がかかりました。
ライブに来ないかと。
なんとびっくり。こんな3千人の田舎町にもライブハウスが存在したんです!
アメリカの音楽の草の根具合にはびっくりです。
ライブの日は週末パーティが行われている金曜日。
なるほど~。メタラーたちは他のみんながパーティやってるときにライブに行っていたのかと。
やってたバンドはたぶん地元のアマチュアバンドだと思います。

 

初めてのメタルライブでびっくり仰天。

客が裸で走り回るし

体ぶつけ合うし

なんか半狂乱で叫んでるやつもいるしで

僕はそんな世界があるなんてこと知らなかったのでもう普通にどん引きでした。


半狂乱になってるやつらを見て思いましたね。
みんなストレス抱えてんだな、と。

 

スポーツができるわけでもなく
成績も良くなくて
社交性もなくてグループに属することもなく
そのうえ根暗で

これではヒエラルキー社会で舐められる。
なにかアイデンティティが必要だ。

そこで見つけたのがメタル。


フライデーナイト

「サンクスゴッシュ イッツフライデー」だ?

ふざけんなよ

どうせやつらはパーティで楽しんでんだろ?

あんなファッキンなやつらのパーティなんかくそくらえだ。

あんなやつら死んじまえ!

ファック!!

こんなくそな世界なんてファックだぜ!

死ね!燃やせ!殺せ!

うぉおお!!ウオールオブデス!

みたいな。


自分は怖いなと思ってライブ会場をあとにしましたが
どこかメタラーたちの悲しさというか寂しさというか、そんなものを感じました。

ほんとに色んな事情を抱えた人たちがいるんだと思うんです。
貧困だったり家庭に問題があったり幼児虐待だったり小中学校でイジメを受けたことがあったり。
でも高校生の小さな社会で、ファック!ファック!ファック!死ね!死ね!殺せ!と叫んでる人を見ても
その憎悪の対象はこの小さな学校、この小さな町、この小さなコミュニティ、この狭苦しいティネージャーの世界に対する鬱屈にしか聞こえませんでした。
アメリカの高校ヒエラルキーってのはかなりの負担をティーネージャーに強いているんじゃないかと思うんですよね。

 

そんなヒエラルキー社会からドロップアウトせざるを得ず周囲に対して鬱屈した感情を抱いている根暗なキッズがいくつく先は、このアメリカのくそ田舎町では、メタル。

キミ、ロンゲにして黒いシャツ着て、やばそうな格好してるけど、ほんとにメタルが好きなの? なめられないためにイキがってるだけじゃないの?
そのヒョコヒョコ歩き、いかにも自分を大きく見せるためのものに見えるよ? そう聞きたくなります。

 

もちろん都市部の高校では全く違う様相だと想像します。
周りに関心がない社会においては単にそれぞれの趣味を追及して、メタラーも本当にメタルが好きだからメタルを聞くんでしょう。

しかしこのど田舎の白人しか住んでいない閉鎖社会。周りの全てが筒抜けて全てが噂になります。どんな格好をするのか、どんな音楽を聞くのか。
メジャーのティーネージャーが聴くのはポップス。ちょっと大人びた高校生が聴くのはカントリーw いや、普通にライフル持って鹿狩りとかしてますからね高校生も。馬持ってる家もあるし。
そんなど田舎では、メタルを聴くってのは周りからなめられないためのスタイル。あいつはちょっとやばいから関わらないほうがいいぜ的な。
黒人がヒップホップYO~ といってギャングのふりをするのがなめられない生き方なら
この白人しかいないど田舎じゃ、ファック!ブッ殺してやるぜ!と半狂乱で叫ぶのが舐められない生き方。

そんなわけで、意外や意外、メタラーってこんなにいるの?ってぐらい田舎の高校にはわんさかいました。

 

あいつらいまでもメタル聴いてんのかなあ。
いまでもファックファック言って世の中を呪ってんだろうか
BABYMETALに対してもファックって言ってんのかなあ・・・